焦げ目なく焙る稚鮎の旨さかな



 八月や地獄の沙汰の黒たまご  水原 春郎

 八月やいまも鴨居に御紋章  柿本多映

 八月の色を纏って風と行く  アロマ

 八月や投網の渋のかれて善く  野村喜舟 小石川

 南に海八月の稲を刈る  岡井省二

 纜(ともづな)をどこまでも透く八月潮  能村登四郎

 匂ひさびし八月の雪子と食めば  能村登四郎

 八月の大仏殿の暗さかな  長田等

 八月の嘘と親しむ甘納豆  坪内稔典

 真珠筏八月明星飽くまで黄  中村草田男

 八月のカフェに碧いソーダ水  アロマ

 八月のセール浴衣の幾何模様 アロマ

 八月の川底明し暮るるまで