終わりの見えない旅路

  空の色も雲の形もいっせいに夏の装いになった。
街路樹の緑の洪水の中で蟬時雨が煩いほどだ。

 うだるような真夏の時間を持て余していた昼下がり
息子が久しぶりにふらっと訪ねてくれた。
息子といっても私とは血の繋がりはなく再婚した夫の
ひとり息子である。
いつもは休日に夫婦二人で訪ねて来るのだが今日は
珍しくひとりだった。

 夫は嬉しそうにソワソワしながら息子と向き合った。
「ん、今日は平日だけど、何か特別な話でもあるん?」

「いや、用事があって半休をとったのだけど、それは
済んだから偶には顔を出そうかなと思って…」

「そうか、それはありがとう!」