遠い夏

 連日の猛暑に閉口していた。
今朝は台風の影響か小さな嵐が駆け足でやって来た。
夜半からの雨が外をしっとりと濡らしている。

 昨日までは熱い光の氾濫する空に積み上げられた
積乱雲の白い峰がどこかに去っていた。
猛暑を駆逐してくれるのかと期待はするものの
まだまだ爽やかな風は吹いてくれないようだ。

 振り返ってみれば、夏の思い出は激しく放埓であり
ダイナミックであるのは、夏のイメージがあまりにも
華やかで刺激的だからであろうか。

 でも、既に古希を迎えてしまった私にとっての
夏の思い出は、静かで優しい記憶しか残っていない。

 11年前の八月末、(私