野葡萄の塀に懸かりて瑠璃の珠



   「アロマ」の句


 空港のロビーに黄の菊香る

 禅寺の紅葉去年よりは闌れて

 石蕗の黄の色鮮やか禅寺に

 料亭に郷土の味覚河豚刺しを

 断層の浜に石蕗満開よ

 島の間に満月上がり晩餐を

 蒼い海に灰白色の断層が

 やや傾ぐ断層ブルーグレーの縞をなす

 萩の宿笠山中腹眺め良し

 野葡萄の塀に懸かりて瑠璃の珠

 龍門の瀧を寺より眺め入る


   「三橋鷹女」の句


 庭園に不向きな赤い唐辛子

 秋蝉の鳴くひきしほのごとくなり

 骨透いて虫よ不眠の夜が来る

 こほろぎを夫が聴く夜は筆おいて

 何といふ月の繊さよ夫に添