冬麗に吾子抱いて庭一巡り



 枯れ葉捲き上げ寒冷前線通過中  吉本和子

 冬晴の水音鋭がり来る日暮  岸田稚魚

 冬うらら海賊船は壜の中  中村苑子

 冬麗のてんと虫とぶ鹿ケ谷  岡井省二 鹿野

 冬晴の日の鎌倉の大通り  上野泰 春潮

 冬晴のとある駅より印度人  飯田龍太

 冬麗の微塵となりて去らんとす  相馬遷子 山河

 健やかな老いのごとくに冬晴るる  小見山希覯子

 冬麗といひて冷え澄むトオヌツプ  上田五千石

 冬晴の洗ひあげたる日野菜かな  鈴木しげを

 冬麗の寺の白砂に気を落とす  飯島晴子

 冬晴やできばえのよき雲ひとつ  岡田史乃