豊かな老いの道

(東京理科大薬学部教授・田沼靖一「老いは贈り物」 日本エッセイストクラブ編「人生の落第坊主」2004年版 文芸春秋より)

サケは、産卵すると(老いることなく)すぐ死んでしまう。犬や猫にも「老いの時」はあるけれど、せいぜい数年である。ところが人間だけは、かなり長い「老いの時間」を与えられている。この、誰も好まない(嫌なイメージしかない)「老い」を私達は一体、どう考えたら良いのだろう。

ブッダが「諸行無常」を説いたように、この世の(生き物を含め)全ては無常の存在である。それも、億年単位の宇宙的時間に比べれば(瞬間とも言える)限られた時間である我々の人生(