冴え渡る大気に古代の息吹あり



 函館の町美しく冴ゆる夜  高畑信子

 まだ仮設住宅多し風冴ゆる  稲畑廣太郎

 猪鍋の伊万里の鉢の藍の冴  堀田清江

 午前五時四十六分月冴ゆる  山田弘子

 ザビエルの鐘冬の夜に冴え渡る  アロマ

 今日の日を惜しむ夕ベの月冴えぬ  村越化石

 教会の鐘バス停までいんいんと  アロマ

 星冴えて妻と飲む茶のほの苦き  内田稔

 視界一八○度玄界灘冴ゆる  宮崎すみ

 星冴ゆる路上ライブのサキソフォン  佐々木よし子

 月冴ゆる影絵のやうなピラミッド  高柳ちゑ

 さんさんと夜の五箇山月の冴え  山田耕子