連載:無刑人・芦 東山

小説「無刑人(むけいびと) ~芦 東山(あし とうざん)~」  熊谷 達也 著  (5)

仙台伊達藩藩儒となり 同藩藩儒筆頭田辺整斎の紹介で幕府儒官 室 鳩巣(むろ きゅうそう)の弟子にさせて貰った孝七郎は室 鳩巣が多忙を極めてなかなか会えないので、待つ間に綱吉時代の幕府儒官で吉宗時代の今は気楽な浪人・在野の儒学者として時々は将軍の諮問も受けている荻生徂徠(おぎゅう そらい)を訪ねた。のちに会える 室 鳩巣との人物対比を示すための創作だろうが、2人の違いが面白い。

 孝七郎が徂徠を訪ねると「土産は?まさか手ぶらではあるまいな?」と云う。「もちろんでございます」と大徳利を2本差し出すと、仙台米の話になり「仙台藩62万石の実高はいかほどに