フランスの暁闇に月冴え返る



 しっとりとけむる街並み春半ば  中川みよ子

 なつかしき山腹の駅雪の果て  甲田夏湖

 おだやかに暮るるひと日や春茜  清水侑久子

 春夕焼ジャングルジムもシーソーも  久保夢女

 カーテンを割るや大きな春の月  柴田佐知子

 安曇野の名残の雪に逢ひし旅  鈴木一睡

 名残り雪踏みて醤油の町歩く  田村すゝむ

 ガス灯は明治のなごり春の雪  伊藤純子
 
 冴返る一〇〇字書評を投函す  遊橋惠美子

 冴返る小学校の長廊下  須佐薫子

 大仏の背の窓あかり冴返る  鈴木輝子

 テーブルの食器の白が冴え返る