あや は同僚先輩の栃谷和三郎先生と結婚した。和三郎は札幌で駄菓子屋をしていた母が、続いて父も亡くなっていた。時代は第1次世界大戦の終わったところで、開拓村では小豆や大豆の長者が生まれ、村を捨て海へ行った者にもニシン長者が生まれた。フキの家も大いに潤ったが、好景気でインフレ気味であったから、教員など給与生活者は苦しかった。
フキは和三郎の生活力を危ぶんだが、あや の気持は強く、恭之助も「お前だって、豊太郎と結婚する時には暮らしの先行きが見えなくて、それでも結婚してしまって、後悔はなかったろう」とフキをなだめてくれた。
結婚式は実に質素で、結納
連載:新十津川物語