長門峡子持ち鮎焼き蓼酢にて



 あたたかや蜆ふえたる裏の川  高浜虚子

 くすくすと蜆が笑ふ夜の厨  内田白女

 のれん入れて風すさぶ夜の蜆汁  鈴木真砂女 夕螢

 これといふ人なき家系蜆汁  岡本久一

 ほつほつと湖に影置く蜆舟  中島喜久子

 この野川蜆掻く子の濁し去る  武笠美人蕉

 叡山の裏側冷えし蜆汁  萩原麦草 麦嵐

 朝日さす色の紫蜆かな  右城暮石

 浜名湖のへりに漬けある蜆籠  富安風生

 初市の祝儀値弾む瀬田蜆  斎藤朗笛

 赤出汁の蜆汁が好物よ  アロマ

 掌に盛れば蜆眩しくこぼれ落つ  山田みづえ

 山さくらむき身蜆にこぼれけり