山河に満つる哀しみも連れ

 表通りの喧騒をよそに、都市部であることをしばし忘れさせる、 たおやかな静寂が包む東京高輪台。
その一角に谷戸を巧みに配した日本庭園をもつ、高輪プリンスホテルがあります。 庭園に植えられた、数十本を越える染井吉野の古木は、その幹の無骨さに 似ない艶やかな花房を、梢の一枝にいたるまで纏い、闇空を覆っていました。
巧みにコントロールされたライトアップの明りと、ぼんぼりの薄明かりが絶妙なバランスで花房を浮き立たせ、妖しいまでの美しさを放つ夜桜を、さらに妖艶に 演出していました。
また、「桜月夜」さながらのおぼろ月が、中空に浮かび至福とも言えるひとときを与えて