連載:心の歌

 翼 

私は何に向かって歩いているのだろう

与えられた時間はそう多くはない

思うように羽ばたけなくなった翼を抱え

私は何をしようとしているのだろう


あの頃は山の頂から大空へはばたいた

斜面を転がり落ちるなど考えもせず

吹き上げる風に翼をもがれる事など

微塵も思う事も無く恐れなかった


いつの間にか少しずつ翼の脆さを知り

空の高さ谷の深さを風の怖さを知り

だんだんと用心深く臆病になった

それでも行く先は微かに見えていた


飛ぶことをあきらめて翼をたたみ

地面を踏んで着実に歩むことを覚え

ついには翼は邪魔物でしかなくなった