翼
私は何に向かって歩いているのだろう
与えられた時間はそう多くはない
思うように羽ばたけなくなった翼を抱え
私は何をしようとしているのだろう
あの頃は山の頂から大空へはばたいた
斜面を転がり落ちるなど考えもせず
吹き上げる風に翼をもがれる事など
微塵も思う事も無く恐れなかった
いつの間にか少しずつ翼の脆さを知り
空の高さ谷の深さを風の怖さを知り
だんだんと用心深く臆病になった
それでも行く先は微かに見えていた
飛ぶことをあきらめて翼をたたみ
地面を踏んで着実に歩むことを覚え
ついには翼は邪魔物でしかなくなった