さんが書いた連載心の歌の日記一覧

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メリークリスマス。

 メリークリスマス。  多くの町ではホワイトクリスマスを迎えている事と思います。  主の御降誕の喜びと祝福が惜しみなく皆様の上に注がれますように、心からお祈り申し上げます。  そして今この寒さの中、戦火に追われ、寒さに震えている人たちの上に救いと平和が必ず訪れますよう願っています、今この時、誰かの命が奪われることが無い事を願ってやみません。  私には祈る事しか出来ませんが、い…

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思い出を空へ返す時

 思い出を空へ返す時 時折ふと思い出す若き日々 君は思い出を捨てたことがあるだろうか 一つの思いにけりを付けるために 僕が大切な人の思い出を捨てる時 そこには必ずもう一人の大切な人がいた 人は誰もが多くの人を愛せると言う でもその思いはたぶん万遍には広がらない もし誰かに強く思いを馳せるなら そこにはきっと寂しい思いをしている人も…

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小春日

秋の日は 欺瞞に満ちた穏やかさで 我が残り少ない時間(とき)を食らう その企みを知りながらもなお 優しき囁きに心奪われ 吐息の様な柔らかき陽射しの糸に いつの間にか絡み取られて 僅かな実りの刈入れの時を逃す や、嘆きたもうなと言う もう一人の自分に肯き 膝で眠る猫の背を撫でながら 午睡の陽だまりに身をゆだねる

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鳥の歌

  鳥の歌 思い出したように友はチェロのケースを開き 娘の好きだった鳥の歌をゆっくり弾き始めた 彼女が春にとけて早五年が過ぎた いつでも一緒に居ると友は言ってた 彼の弾く鳥の歌を少し外れてると笑いながら 幸せそうに遠くを眺め静かに聴いていると どんなに呼んでもどんなに望んでも 抱きしめられないこの思いを 春の夕暮れの風に流し歌で贈る 心からお前を愛しているとつぶやく様に …

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五月の風

テュラルラルラと風がゆれる 卯月皐月の光る雲の下で 今でも君を愛している 優しい微笑みはこの胸に咲いてる テュラルラルラと風が輝く 青葉若葉を軽やかにすり抜けて まるであの日の君の様に 弾ける笑い声あおぞらに溶けて行く もしも願いが叶うならば 僕の時間を君と分けたい せめてもう一度この腕で 君を亡くさない様抱きしめたい テュラルラルラと風が流れ 陽射しや雨を…

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 翼  私は何に向かって歩いているのだろう 与えられた時間はそう多くはない 思うように羽ばたけなくなった翼を抱え 私は何をしようとしているのだろう あの頃は山の頂から大空へはばたいた 斜面を転がり落ちるなど考えもせず 吹き上げる風に翼をもがれる事など 微塵も思う事も無く恐れなかった いつの間にか少しずつ翼の脆さを知り 空の高さ谷の深さを風の怖さを知り だんだんと用心深く…

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さくらさくさく

さくらさくさく ゆめはわくわく くもはもくもく わかばすくすく さくらちらちら きみはきらきら こころくらくら こいはいらいら さくらさわさわ こころそわそわ からだふわふわ ひざしほわほわ さくらほくほく ぼくはてくてく こいはちくちく なみだしくしく さくらはらはら あめはさらさら かぜはうらうら ゆめがゆ…

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戦場にクリスマス

メリー・クリスマス 冷たい風にコートの襟を立て メリー・クリスマス 誰もが皆家路を急ぐ メリー・クリスマス 僕は家族と肩を寄せて メリー・クリスマス 静かな夜を教会で迎える メリー・クリスマス 僕はミサイルも爆弾の音も知らない メリー・クリスマス 機関銃を掲げた少年たち メリー・クリスマス 君の目に映るのは敵ではなく隣人だと気付いてほしい メリー・クリスマス 戦闘機にも戦車にも聖夜は訪れる …

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秋の風

  秋の風 秋の風は思い出に似ている 誰かが呼んでいる気がして ふと振り返るとそこに居る 優しくて少し寂しく 懐かしくて人恋しくなる 秋の風はあの人に似ている この手の中に確かに在るのに 抱きしめるとするりと逃げて行く そして木の葉をひらひらと揺らして 僕にバイバイと微笑んでいる 秋の風は思い出の香がする

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残照

  残照  いつか君に約束した 素敵な風景を送ると  それを果たす為に 僕はこの里を訪ねた  高台から見下ろす谷に  肩を寄せ合う様に数軒の家がならぶ  今はもう送る先のない風景を  僕はカメラに収める  こんな優しい風景を見て  君はなんて言うだろうか  どんなに考えてもその答えが見つからない  それが二人の恋の答えなのかもしれない  夕げの煙が細く立ち昇り  …

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9月の朝

9月の遅い朝 気が付くと蝉の声は途絶え 窓を開けると吹き込む風は心地よく 秋の衣に身をまとった雲がゆるやかに流れる 量販店の店先から花火が姿を消した まだ昼間は暑いと言うのに 周りは皆秋化粧 隣の庭の芙蓉が咲いて久しい この花が枯れるころはもうすっかり秋 庭に来る野良たちは夜な夜な恋のさや当て   やがて来る厳冬の前の華やかな一舞台 木々の間を行く風の様に静かに時は流れ …

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薫風高く空にあり

庭の木の若葉に風の宿り 時はよどみなく流れて行く 薫風は空に有りて我を誘い 思い出は地に有りて我を留む 楽しかった過去は何も生まないよ 若いあなたはそれを捨てるべき 私の大好きだったあの人の言葉 恋に終止符を打とうと決めた日 私は大切な懸想文をすべて集め 煙にして青い空に放った これで良いんだと自分に言い聞かせ その日私は新しく踏み出せたのか それは今でもわからない…

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昨日の夢

試験を終えた学生服たちが一斉に歩き出した まるで光に向かって歩くように胸を張って 私も皆と同じように明日に向かって歩いていた 懐かしいセーラー服姿の少女が駆け寄ってきた 誰だかわからないがとても懐かしい人だった さも当たり前の様に私に並ぶと腕を取った 二人とも前を向いたままだったが お互いがしっかりと手をつなぎ合っていた 不意に君が「こうしてると鬱陶しいかな」と聞いた 「そんな…

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 風花

   風花がひとひら思い出を抱いて 風花がふたひら悲しみを連れて 澄んだ空から舞い降りて来た 私の手のひらの上で 小さな小さな涙になった その姿は頼りなくて愛おしくて まほらに憧れた若き日の夢の様に 言い出せなかった少年時代の恋の様に 玉響の輝きと儚く消えた 冬の陽が射す国道の上を 散り惑う様に風花が舞い降りて来た

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赤鼻のトナカイ

暮れも差し迫ったある日君と買い物に出かけた 町はクリスマスソングにイルミネーションが踊る 駐車場を歩きながら呟くように君が言った 「赤鼻のトナカイって寂しい歌ね」 「どうして?」 「だって彼は一年に一回しか褒められないんだよ」 「そうだね」 「あとはみんなに笑われて過ごすんだから」 「でもさ、一年に一回でも必要に思われる」 「他の誰も代わる事が出来ない彼の能力なんだから」 「笑ってる者たち誰も…

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冬の恋

   それは思うだけで涙が出る様な とても優しい恋だった 誰にも話さず二人だけで育てた とても密やかな恋だった どうしてなんて言葉がこれほど似合う別れには たぶんもう二度と出会う事などないだろう 満ちた潮がやがて引いて行く様にとても自然に 時の流れの中で逝った恋 両手で抱えた砂が指の間から流れ 何も残さず風に吹かれる様に 季節に追われて逝った恋 ふと君の笑い声が聞こ…

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初冬の朝に

庭の木の葉がはらはらと散る 春暖かい陽にてらされ お前たちは芽吹いた 初夏の爽やかな風に淡く輝き 空に恋する様に思いを広げた お前たちはいつも空にあこがれ 雨の日も月の夜も 空に思いをはせていた 夏熱い太陽の如く お前たちの思いも燃えていた 空が遠く感じふと寂しく思う その時もう秋が来ていた 初冬の朝冷たい風に お前たちは一ひら二ひら ついにその思いを散し …

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僕は雨を知らない

あの町に大きな爪痕を残した雨も 僕の街ではアスファルトを濡らす水 やがて雲も去り君はまた布団を干す ぶり返す暑さにもう少し降ってもいいとつぶやく あの町では多くの人が銃弾に倒れた 僕の街では老人が転んだと救急車が走る やがて時は去り人は平和の重さを忘れてしまう 神は人をより分けるために地上に炎を降らす 僕は雨粒の一つ一つを知らない その濡れた世界だけを見る 一つの雨粒がどうなったかなど分から…

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ラブソング

もしも僕の願いが叶うならば もう一度君と出逢ったあの頃に戻りたい 言えなかった言葉や置き去りにした微笑み そのすべてを拾い集め君に捧げたい たぶん貧しさに追われ気付かずに過ごした 君がくれたたくさんの僕への深い愛 時には君を裏切ったり悲しい思いをさせた そんな全てをいつも君は黙って受け止めた 思うだけで涙が溢れそうになる 僕はいつも君の優しさに守られて来た 気が付けばこの…

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鳥になりたい

初秋のこよなく晴れた空を 白い鳥が帰ってゆく 高い高い山を越えて 懐かしいあの町へ 誰も彼等を止めはしない 国境も兵士たちも いつの日にか私も帰ろう 生まれたあの町へ 誰が決めたの国境なんて 誰が決めたの正義なんて 私が何をしたというの 国が私に何をしたの 白い鳥になりたい 悲しみの海を越えて そして明日帰ろう 母の待つあの町へ (横田めぐみさんに捧…