藤の花靡きひらりと風躱す



 下界の灯すべて呑み込み大霞  堀田清江

 オホツクの風万緑に吹きすさぶ  右城暮石 上下

 万緑に沈む夕日の朱を見たり  福田蓼汀 秋風挽歌

 万緑の中より太き川出づる  加藤憲曠

 万緑の動いて風の五浦かな  福島壺春

 万緑や日月われをめぐるのみ  野見山朱鳥

 万緑や病者夕べも麦藁帽  上野さち子

 鯉の跳ね万緑一瞬緋の入りぬ  尾崎弘子

 万緑の天地有情や杣男  原裕 葦牙

 万緑を行く一葉を笛となし  鷹羽狩行

 硝子玉吹く万緑へ窓を張り  岡本眸

 妻を率て万緑の中風あらし  角川源義

 萬緑のむせぶばかりや妻