連載:蒼鷺

小説 蒼鷺 (4)

「恋していない私がいるのは罪だと思う」
優子は離婚を決意した一番の原因はこれだという。夫に恋していない妻、結婚していない榮子には意味は理解できても、実感は伴わない。

恋をして結婚したのに、愛は冷めていくのだろうか。脳裏に逢瀬を重ねた彼との時間が甦る。
「先生、新しい企画の事で、大沢さんからお電話くださいとのことです」
留美子の電話にはっと我に返る。

この数日、気分がすぐれない。出会いと別れ、かみ合わない思い、齟齬の言葉の数々、自分の中で、まだ精算できていない思いが、仕事をしている榮子の袖をひっぱるのだった。

一方的に心を切られるのは、蛇の生殺しだと