連載:恋文仮想空間 三十一文字

恋文仮想空間  三十一文字(三)


夏の夜のはぐれ蝉鳴く一人寝は 風の流れに星の音聞く



(二十一)

野ざらしの恋の欠片は朝露の 光の粒に虹と輝く


願い事うちに秘めて仰ぎ見る ブルームーンに君の面影


光降るブルームーンの野を行けば 愛し恋しと叢は泣く


八月の野原に伏して恋語る 二人に降り積む蒼い月光


空蝉のひとつ踏まれて声消える 鈴虫松虫叢にあり


ベランダに鳥が忘れた月見草 薄黄の花びら恋は儚く


恋しさは遠くにありてなおつのる 冬の夜空の流星行く先


火灯しの寂しき夕暮れ川に立ち 水面になぞる君の面影


だらだらの坂下りたる君の背に 放恣な時間甘く委ねる