夏は来ぬ梔子の花香り立つ



 阿蘇の野を濡らす夏霧迫り来し  稲畑汀子

 夏の昼地下街に来て魚になる  谷口亜岐夫

 夏は来ぬ梔子の花香り立つ  アロマ

 夏蝶の吹かれ来て飲む溶岩の水  富田うしほ

 夏萩や山より晴れて来し野面  上村占魚

 樹々のかげ濃くなり海の夏来る  山口波津女 良人

 夏来る海へ行こうと準備する  アロマ

 子供らに夏は来にけり豊島園  柏崎夢香

 夕めしのたのし夏来ぬすだれ掛く  森川暁水 黴

 夕餉呼ぶ子の声さやに夏来る  角川源義

 山深く来し思ひかな夏薊  鈴木真砂女 都鳥

 山水のはしる母郷の夏来る  飯田蛇笏 家郷の霧