夕闇の青田漫ろ行く人よ



 脱皮して蝉の余生のはじまりぬ  杉山和美

 山霧を抜けしは脱皮せるごとし  中村芙路子

 瑠璃鳴けば栗鼠が顔出す夏の空  飯田龍太

 夏天ちかく放ち飼はれし馬の艶  大野林火

 夏空を広げて庭師終りけり 飯田千枝子

 雲は王冠詩をたづねゆく夏の空  仙田洋子 雲は王冠

 夏空へ雲のらくがき奔放に  富安風生

 麦の穂にあした生れし黄の蜻蛉  山口青邨

 沼光る中に光りて蜻蛉生る  石井とし夫

 降る火山灰に蜻蛉生れんとしてゐたり  西村数

 いつまでを青春といふ夏衣  高橋悦男

 著て涼し仕立おろしの麻衣  高浜年尾

 蜩や