連載:コロナ

「離れて下さい」

フェイスシールドを付けた白衣の女性が言った。
「離れて下さい」

屋外にいる私に、皿の中に保険証と診察カードを入れるように言った後、ガラスの向こうで頭をのけぞらせるようにした。これか、私はばい菌なのだ。


かかりつけ医の「職員通用口」を入り、11時ぴったりにインターフォンを押した。

患者は屋外にいて、窓で対応出来るようになっていた。病院の保育器にあるような手を突っ込む穴が開いている。

まもなく医師が顔を見せ、症状は電話で聞いたからと早速検査となった。今までだって、職場で何度も何度も自分でやっている抗原検査。だが、あれは鼻の入口に過ぎなかった。