宇津保物語を読む



 蔵びらき 上 15


 祐純は、

「仲純は心が堅い男であったから、自分の身を亡きものにしてまでも言葉に出さず、訴えもしないでしまったのですね。

 私が仲純の後生を弔う営みをしましょう。私も、あて宮が春宮の許にあがる以前の秋頃に、あて宮のような女を妻にしたいものだと思ったこともありました」

 と言うと、あて宮は笑って

「亡き人仲純のようなことを仰って。仲純は思い詰めたこともあったのでしょうが、はしたない行動をしたこともありました」

「可哀想なことに」

 と、祐純はつぶやくように言って

「常にもこちらに参ろうと思うが、世間が煩いこと