街に清々し香水とすれ違う



 冷奴薬味三皿をそろえけり  高畑太朗

 ふるさとの富士の湧水冷奴  飯田節

 花かつを生姜添へたる冷奴  二村蘭秋

 どちらかと言へば木綿の冷奴  大島翠木

 薬味かえ殖やす一品冷奴  中島英子

 ひとりゐに風ふき抜くる冷奴 栗原公子

 終電車昨日も今日も冷奴 吉井潤

 過ぎし日より今が大事と冷奴 犬塚芳子

 冷奴時には茸餡掛けで  アロマ

 冷奴薬味に七味唐辛子 濱野新

 不器用に生き真四角な冷奴  守屋久江

 かぎりなくやさしき夕日冷奴 櫻本武志

 冷奴崩れ火襷浮ぶ皿  稲畑廣太郎

 じいと鳴く蝉それきりの朝ぐもり