月明かり解けて出湯に傾れ込む



 ボタン押し降りる秋日の無人駅 和田啓

 軒先に干柿ならび月明り 續木文子

 秋日濃し沓脱石に桐の下駄  宮下桂子

 秋日暮れ落葉松の黄の浮き上り 秋川泉

 つばめ魚飛ぶ月明の波うねり 中尾杏子

 冬満月明石海峡隈もなし 橋本榮治

 岩風呂のぬるきが馳走秋日落つ 丸井巴水

 川の秋日射しの底に魚の影  湯本正友

 秋日差し露天湯に一匹蜻蛉飛ぶ  アロマ

 濡れ縁の木目に午後の秋日差す 藤井美晴

 秋日差す棚田に人のいそしめり 山本泰人

 秋の日の何をするにも良かりけり  本田保