74  「小伝抄」―星川清司 直木賞 平成2年版


小伝は、船宿の主、万五郎に拾われて育てられ、裕福な家に子供時代を過
した。竹本芝桝という義太夫の師匠のもとに通い、名を挙げたので、竹本小伝となった。役者の尾上菊五郎を見初め、恋仲になったが、捨てられ、その腹いせに役者の坂東三津五郎の妻を追い出し、後添えに入った。容色に勝るものがあったのであろうが、したたかでもあり、豪気な性格を持ってもいたようだ。その三津五郎が、女形の菊之丞と良い仲になったことを恨み、菊之丞を篭絡し、浮名を流すようになる。しだいに、男関係も増え、「小女郎」とか、「淫婦」とか呼ばれるようになり、数十人の男と関わりを持ったと艶聞も流され