連載:戯れナンセンス

影絵



真っ白なスクリーンの裏側にスポットライトを置く。
ライトを点灯し、その光の前に手をかざす。
するとスクリーンには手の影が現れる。

右手と左手を起用に組み合わせ、あれやこれやの形を作る。
人々はその形の変化に見入り、時には感嘆の声を上げる。

手をどけると影絵は消える。
ライトを消しても影絵は消える。

影絵は跡形もなく消えるが、人々の心の中には思い出として残る。
その影絵を作ったのは紛れもなく手であったはずだが、人々の心の中には手は残らず、残るのは影と言う実態のない存在だけだ。


現実に生きる我々はあれやこれやと苦