時代小説

「宵待ち銀次・江戸草子」
       なからい悠

(鋳かけ屋・その1)
銀次が町の衆から、なぜ?宵待ちの親分と呼ばれる様になったか、本人は勿論知る由も無いのだが、 ひと伝えで聞いて居るのは、お久を嫁に貰った当初のことだ、お久が髪結いの店へ通いで働いて居た頃に遡る。
その頃は銀次も下っ引きから、ようやくに同心・岡崎佐内の下で岡っ引きになったばかりの頃、町の衆はどう?呼ぼうか思案をして居たらしいのだ。
いつも夕暮れに浅草橋までお久を迎えに行って居た姿を見て、誰が言う理由(わけ)でもなく宵待ちの親分と呼ばれる様になって居た。
さて、江戸の町も