連載:

「一輪の花に」

ランチュウは体の割に鰭が小さく、まるで幼子のヨチヨチ歩きを連想させる。

今や琉金を遥かに凌ぐ大きさに成長したばかりか、ちょこまか元気に泳いでいる。琉金は一匹がじっと動かない。

リビングの雨戸を開けると、「桃太郎」が4輪迎えてくれる。しみ一つない桃色が何層にも重なり、黄色い花粉を戴いた雄蕊を守っている。花自ら発光しているようだ。

何時までも蕾が上がって来ず、今年は失敗したかと半ば諦めていた君子蘭に蕾を見付ける。

テレビは今日も灰色の瓦礫の山を映し出す。人間が破壊し尽くしたウクライナと、大地震が襲い掛かったトルコ。両方とも胸塞がる思い