失われた思い

 瀬田川から宇治川、そして淀川へとまるで出世魚のように名前を
変えながら、故郷の川はゆっくりと迂回してゆく。瀬田川の二世・
宇治川のその丁度中ほどの、小高い丘の上に御陵の大きな森がある
が、その森の向うの高校に私は通った。
 当時、一年ほどもかかって何とか隅々まで自力でやり通すことが
できた受験参考書は、解析数学一冊だけで、英語はとても一人では
歯が立たなかった。
 偶々飛びこんだ某大学の助教授の塾で、決定的な指導を受けたこ
とがその後の私の人生を左右した、といっても過言ではない。
 勉強とは何か、ということに初めて開眼させられた思いで