本田忠勝の娘

信州の真田昌幸は、のっぺきならぬ事情から、家康の
娘を我が子、信之の嫁にもらうことに同意させられます。

もっとも、家康に恰好の娘はなく、家来の本田忠勝の
娘をいったん養女にして、そのうえで嫁ぐという、
いわば、政略結婚でもありました。

(省略)

輿入れの一行は、日暮時、城下にはいった。
城下の到るところに篇火が真昼のように焚かれていた。
その中を長い隊列は、東方の小泉口より城内へはいった。

月姫は輿より降り、侍女房に手を引かれて、庭を通り
抜け、途中から館にはいり、長い廊下を通って奥へ
導かれて行った。

昌幸は