私小説 と 水上勉の「凍てる庭」

 「凍てる庭」は水上勉が新聞連載小説として執筆し、自身の戦後を描いた自伝的小説である。水上勉(みなかみ つとむ)は本名で、ペンネームは途中から「みずかみ つとむ」と名乗ることにした。

 水上は本当に苦労の多かった作家で、若狭の僻村の大工の家に生まれたが、幼時は貧困で勉学の機会は無かった。ただ、とても賢いと評判になり選ばれて寺に入らされ、旧制花園中学卒業まで学ばされた。ただ、寺の修行はあまりにも厳しく最初の寺は途中で脱走して連れ戻され、別の寺から中学へ通わされた。

 中学卒業後(旧制中学は5年制で、現在なら高校卒業後)は寺を出て、伯父の下駄屋や