連載:読書感想連載

この1冊『風の良寛』(中野孝次著)は、良寛は、生涯ずっと身を無の側に置いて生きた、という

 良寛のその人となり、人間性も、その書や詩や歌も、すべtわたしには堪えられぬそういう極限にまで単純化された生からのみ生まれた。 良寛が最も尊敬した道元。 貧乏でなければ道は悟れない、と。
 「貧なるが道に親しきなり」 目に見えない価値に身を捧げる決心をして、僧になった。 良寛の、 弱弱しい無抵抗なつぶやき。 水が岩石を流すようなものだ。また実体のないものであってこそ、少しの隙間もないところまで入ってゆける。水がきまった形をもたないからこそ、どこへでも浸み込むようなものだ。 老荘のこういう無為の教えは、良寛には親しいものであった。
 一見は愚者
 円