ノックスの十戒

 島田荘司の「ローズマリーのあまき香り」を読了した。著者は御手洗潔シリーズ、吉敷竹史シリーズ等で知られる本格派の推理小説作家である。本書では、1977年にニューヨークで起こった伝説のバレリーナが殺害された密室殺人事件の謎に、スウェーデンに移住し、大学教授になって脳科学を研究している御手洗潔が挑む。したがって、本書のワトソン役はいつもの石岡和己ではなく、ドイツ人ジャーナリストでハインリッヒ・フォン・レーンドルフ・シュタインオルトである。なお、本書は八章構成であるが、御手洗が登場するのは第五章からである。
 第一章では御手洗が登場する十五年前の1977年1