インカ帝国にとっての新大陸

 ローラン・ビネの「文明交錯」を読了した。著者はフランス在住の小説家であり、デビュー作の「HHhH」でゴンクール賞最優秀新人賞を受賞しており、兵役でスロヴァキアにフランス語教師として赴任した経験を持つ。本書は、鉄、銃、馬、そして病原菌に対する免疫を持っていたインカ帝国の人々が、スペインを初めとするヨーロッパ諸国を征服した世界を描いた歴史改変小説であり、アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞作である。なお、本書は四部構成になっており、第三部「アタワルパ年代記」で、史実では最後のインカ皇帝であるアタワルパが神聖ローマ皇帝に即位し、ヨーロッパを支配する過程が描か