黄泉の女王

 知念実希人の「ヨモツイクサ」を読了した。著者はミステリー作家で、「誰がための刃」で2011年第4回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞して作家デビューしているが、現役の医師でもある。本書は、アイヌから禁忌とされた森に生息する異形の存在の脅威を描いたバイオ・ホラーである。
 北海道の美瑛町の山奥には、古くからアイヌが足を踏み入れてはならぬと言い伝えてきた、禁域の「黄泉の森」がある。明治時代、石炭を採掘しようとしてその地に移住した人々は、神に仕える怪物のヨモツイクサに少女を生贄として捧げることにより、その地に住むことを許されたと言う。しかしある時、生