振り向けば暮れ行く街の秋深む



 料理書の染みに家族史秋更くる   荒井千瑳子

 寺町の夕風はたと秋めける  今橋眞理子

 振り向けば暮れ行く街の秋深む  アロマ

 高野の秋金剛界にパスタ膳   渕上千津

 蕎麦啜る山中を秋急ぎおり  吉田透思朗

 指先の影に秋立つ弥勒仏  中村房子

 江の島や秋立つ松葉ちくちくす  辻桃子

 庭に出て辺り秋めく宵の口  アロマ

 路次の日に出す鉢植や今朝の秋  鈴木真砂女

 こほろぎのなく夜ぞしかと秋来たり  中尾白雨

 秋来ると町屋根越しの白マスト  野澤節子

 青ざ