化け者暴きの幕が開く

 蝉谷めぐ実の「化け者手本」を読了した。著者はミステリー、時代小説作家であり、「化け者心中」で第11回小説野性時代新人賞を受賞し、作家デビューしている。本書は「化け者心中」の続編であり、元名女形の魚之助と鳥屋の藤九郎のバディが、芝居小屋で起こった怪異に再び挑む姿を描いた時代ミステリーである。
 日本橋は通油町で百千鳥という鳥屋を営む藤九郎が、鳥好きな客の曲亭馬琴と店でいすかの嘴の話をしていると、魚之助の飼い猫の三毛猫の揚巻がやって来る。それは魚之助が藤九郎を呼び出す合図である。魚之助は稀代の名女形であったが、贔屓客に襲われて怪我をして、膝から下を失った