『フォルトゥナの瞳』(百田尚樹著)は葵の目から涙がこぼれ、頬に伝って落ちた、と

 やはり自分には死期が迫った人間がわかる。その人物は透けて見える。 ただ、自分だけ、そう見えるのだ。 今や慎一郎は
確信した。自分には「死」が見える。 ただ、死を間近にした人間を見分けることができるのだ。 病院に入った途端、早くも3人の人間を見た。やはり体の透けた人たちは「死」を間近に控えている人間なのか。 自分にはやはり「死」が見える。 病気を含めたすべての「死の運命」が見えるのだ。 植松真理子は2年前まで事務員として働いていた女性だった。年齢は慎一郎の3歳下だった。 顔も頭もすべて透き通っているのではないかと思ったのだ。だとすれば、彼女の眼の前には