寂しくないかい

 現役時代の慌ただしさはなく、少年時代よりも時間の流れが早い日常なのに、何故か寂しさが襲い来る。
多忙を極め、逃げ出したかったあの頃。
目覚めれば行き場所があった。
否応もなく寂しさが吹き込む隙間さえなかった。
日々の生業が、友との語らいが、そして何よりも若さが、空虚な心を生成させはしなかった。
これから先、行くあてもなく、義務や責任という重しもずいぶんと軽くなり、浮足立ったまま、漫然と過ごす。
これといった趣味もなければ、心ときめく楽しみもない。
自由なようで不自由な毎日。
制約がないようで制約だらけな毎日。
寂しさのないあの日はもう