タオレテ、ノチ、ヤム(斃れて後已む)94歳の想いと暮らし(10)寝惚ける

「ちょっと、夜になってからオカシイんだよ」
「からだ?」
「さっきから、高速を走ってるバスの中で、からだがどんどん左へ傾いていくんだよ」
「ちょっと、待って。今、バスの中? そんなはず、ないじゃないか。携帯持ってないキミが電話してきてるんだから」
「そうかあ。しかし、からだ、揺れてるんだ」
「えっ?」
「左へ傾いていくんだよ」
「キミね、自分の部屋から電話、してるんだよ。目が悪いから、よく見えないだろうけど、その椅子が傾いてるんじゃないの」
「いや、ボクは、老健からバスで、孫の様子、見に行く途中なんだ」
「そんなわけ、ないだろう。もう夜