シングルマザーの新聞記者

 長岡弘樹の「球形の囁き」を読了した。著者はミステリー作家で、短編の名手と言われている。本書は、刑事の羽角啓子とその娘の菜月の母娘を主人公とした、ミステリーの連作短編集である。本書では菜月の高校生、大学生、社会人、そしてシングルマザーとなった姿が描かれている。刑事だった夫の死後、シングルマザーで菜月を育ててきた啓子は、杵阪署刑事課で順調に出世し、警視で定年退職するが、その後も再任用で後進の教育を担当している。
 「緑色の暗室」:高校二年生になった菜月は、県立宗武高校の新聞部に所属している。宗武高校には写真部がなく、暗室もないので、菜月はある日、レンタル