『万葉集』を訓(よ)む(その二千六十五)

 今回は、一六九八番歌を訓む。本歌は「名木河作歌三首」の三首目。
 写本に異同はなく、原文は次の通り。

  焱干 人母在八方 
  家人 春雨須良乎 
  間使尓為

 一句「焱干」は「焱(あぶ)り干(ほ)す」と訓む。この句は、一六八八番歌一句と同句。「焱」はラ行四段活用の他動詞「あぶる」の連用形「焱(あぶ)り」。「あぶる」は「火などで暖めたり、乾かしたりする。」ことをいう。「干」はサ行四段活用の他動詞「ほす」の連体形「干(ほ)す」。「ほす」は「水分、湿気などを取り除くために、日光や火にあてる。濡れたものなどをかわかすために、風や熱などに