芽柳の早緑霞の如くなり



 あめつちに霞濃き日の松の芯  鷲谷七菜子

 高根まで青麦の世や夕がすみ  松岡青蘿

 遠里の麦や菜種や朝がすみ  鬼貫

 兼六園一望欠けし春がすみ  青木重行

 尾根寄りに五六戸ひかる昼がすみ  荒井正隆

 芽柳や雨にけぶりし中之島   高野清風

 芽柳のおのれを包みはじめたる    後藤比奈夫

 芽柳の触れむばかりに渡舟着く  田中蘇水

 芽柳の早緑霞の如くなり   アロマ

 芽柳や人並びゐる佃煮屋 阿部紀子

 芽柳に竜馬の宿の紅格子 岩崎憲二

 芽柳に土蔵の厚き窓開く 小阪律子

 芽柳に触れてすぎゆく手漕舟 堺紀美子