熊谷達也の短編集「懐郷」の中の「磯笛の島」

 この短編集は、時代の変わり目であった昭和30年代をひたむきに生きた女性たちを描いた7作品だが、

 「磯笛の島」はその巻頭を飾っている物語だ。

 ついでだから紹介するが、「オヨネン婆の島」は伊豆七島の中でも僻地であった御蔵島の本村(里村)から分村した南郷が廃村になる、その最後の一家族の祖母と息子夫婦・働き盛りの孫の物語である。

 「お狐さま」は仙台出身の教員の妻が宮城県の田舎で都会との地域格差を痛感しながら、野生の狐との交流を描いた物語である。

 「X橋にガール」は、かって街娼がたむろしていた仙台駅の裏で生活し、街娼からオンリーさんになる事が出来