『邂逅』③

「もうし。お頼みもうす」

「佐助らしいな。中は取り散らかしておる。よければ
入れ」

ムシロがけのかまぼこ小屋に似合わぬ明るい声が返って
きた。

「まぁ、そこへなと座れ」

もっとも いくら佐助が小男でも立っているわけにはいか
ない。中腰になっても小屋の天井に頭がつかえる。

「さっそくながら、これを」

佐助は慶長小判十枚を差し出した。

「ああ、そこに置いておけ」

ぞうさもない声だった。
佐助は平身のまま構わず続けた。

「いよいよ、ご入城と決まれば、ご入用の金子はいか
ほどにも整えまする」

「茶でも馳走するかな」

このムシロ