「もうし。お頼みもうす」
「佐助らしいな。中は取り散らかしておる。よければ
入れ」
ムシロがけのかまぼこ小屋に似合わぬ明るい声が返って
きた。
「まぁ、そこへなと座れ」
もっとも いくら佐助が小男でも立っているわけにはいか
ない。中腰になっても小屋の天井に頭がつかえる。
「さっそくながら、これを」
佐助は慶長小判十枚を差し出した。
「ああ、そこに置いておけ」
ぞうさもない声だった。
佐助は平身のまま構わず続けた。
「いよいよ、ご入城と決まれば、ご入用の金子はいか
ほどにも整えまする」
「茶でも馳走するかな」
このムシロ