『殺意』③


「しかたないわね。いっしょに付いていってあげるわ」

元々 小夜子は佐多を真から好きということはなかった。

ただ 自分を必要としているような男が佐多だったので
ほうっておけない気がしただけだったのである。

だが 今は 今までのいかなるときの佐多よりも 今夜の
佐多が好きなような気がした。

構(かま)えも気障(きざ)もすっかり失い すがってばかり
の男の気弱さが 彼女をとらえた。

(しかたがない。一緒に死んでもやろう。自分はどうせ
こうなるようなっていたのだろう)

小夜子は 佐多をバスルームにつれて行って服を脱がせた。

洗面器に水を汲んで顔