巨大な密室

 白川尚史の「ファラオの密室」を読了した。著者は弁理士出身のミステリー作家で、本書で2023年第22回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューしている。本書は紀元前1300年代後半の古代エジプトを舞台とし、一度死んでミイラにされた神官が、先王のミイラ消失の謎に挑む姿を描いたミステリーである。
 物語の舞台は1330年代中頃のエジプトで、ファラオのアクエンアテンが亡くなった直後である。アクエンアテンはアテンを唯一神とする宗教改革を行い、首都をワセト(テーベ)からアケトアテンへ遷したファラオである。先王アクエンアテンの葬儀の当日、神官長のメリラ