この人を見よ

目を真っ赤にして大阪から歩いて奈良まで帰ってきた。
大空襲のあった日に。
母よりそれを聞かされた時、「ああ、仙人ではないのだ」と思った。
妻が嫁姑問題で、私に詰め寄るので、父に相談した。
「そうすることで、だれが得する?」という答え。
「ああ、仙人ではないのだ」と思った。
102歳の臨終を看取った。
朝4時。音もたてず、「あ」と言った。
脈がない。息もしていない。訪問医をお願いしていた隣のお医者さんのベルを鳴らした。
「早朝に済みません。父が亡くなったようですので」
ガウンを引っ掛けて出て来られた。
診察をしていただいて死亡宣告。
「やっぱり、仙人だった