結婚しょうよ!

 あの頃は若かった。大学進学が決まりあとは卒業式を待つだけだった。
 国立大学が一期、二期と別れていた頃だ。共通一次試験などない時代。
 山陰の片田舎から卒業したら都会へ行くぞとクラスの仲間ははしゃいでいた。
 深夜放送はオールナイトニッポンと旺文社の受験講座に耳を傾けた。
 卒業までの数日をギターも弾けない、音程も定かでない私だったが、夢中で聴いていた曲は吉田拓郎の「結婚しようよ」だった。
 田舎に洒落た教会もない。家にベランダなどない。長閑な田園が広がる郊外に住んでいた。
 通学はもちろん自転車だ。制帽もかぶらないで、長髪気味の髪は肩まで伸ばすと決め