上げ潮の香や大阪の夏が来る 西村和子 　厨房にキャベツ溌剌夏は来ぬ 鷹羽狩行 　夏は来ぬ花柄木綿のワンピース　　アロマ 　カッコーが棲む交差点夏は来ぬ 　佐藤喜孝 　江ノ電の木の床ゆかし夏は来ぬ 　野村重子 　朝市の太きアスパラ夏は来ぬ 西本花音 　熊笹の色鮮やかに夏は来ぬ 　　上辻蒼人 　雑草の勢ひ著き夏は来ぬ 浅田セツ子 　サラダのアスパラ白く夏は来ぬ　　アロマ 　金…

　龍の背の街を抱くや春の虹 　平野加代子 　みちのくの田の神迎ふ春の虹 小森泰子 　着陸の飛行機春の虹連れて 　　東良子 　天空に春の虹の輪機首上げよ 中尾杏子 　 　春の虹何かさがして広野行く 　柴田靖子 　 　春虹や水のかをりの草千里 　　西川麻規 　 　過去はまだかがやいてゐる春の虹 荒尾かのこ 　春の虹夢か現か窓に見る　　　アロマ 　春の虹車窓を丸く囲みける 　赤座典子 …

　鯉こくに輪切りの葱と茗荷かな　　アロマ 　鯉の甘煮酒に醤油と砂糖加えて　　アロマ 　町変り人も変りし鯉のぼり　　 百合山羽公 　桐箱にひたたたまれて鯉幟 　　辻桃子 　揚揚塔けさ鯉のぼり泳がせて　 樋笠文 　家格見せ忍野の里の鯉幟 　　森田公司 　初孫のいやいやしてる鯉幟　 大村恭子 　夕月やあぎと連ねて鯉幟 　　三橋鷹女 　鯉のぼり近く…

　湯上りの月それてすむ木槿かな 　金尾梅の門 古志の歌 　潦いくつもありて木槿咲く　 館岡沙緻 　 無造作に重ね盛装白木槿 　香西照雄 対話 　 照る雲と降る雲の間の白木槿　 渋谷道 　 熱の目に木槿うるさく咲けるかな 　久保田万太郎 流寓抄以後 　坂の家薄紫の木槿咲く　アロマ 　田の縁に薄紅の木槿満開　アロマ 　 片時の木槿揺るれば秋の風 　斎藤玄 雁道 　 物問へば隠…

　麗しの五月フエリス女学院　 市原みどり 　さ緑の林に揺らぐ風となり　アロマ 　鳥籠のブランコ揺する風五月　 満田春日 　鳴つている電話放置や五月病む 　大木美代子 　 鳶高く五月の旅を明るうす 　阿部みどり女 　風生れ光あふるる五月かな 　川口咲子 　飴売りの戦争の絵の五月かな　 月舟俳句集 原月舟 　館五月陰翳ふかきピカソの絵　 大橋敦子 手 鞠 　谺こめて五月の一樹雨降…

　トンネルを出れば長滝別天地 　山口誓子 　トンネルを出れば北見の国の秋 　星野立子 　トンネルを登山電車のひた下る　 阿波野青畝 　トンネルを抜けて越後や稲の秋 　石塚友二 磊[カイ]集 　トンネルを百も越え来ぬ土用波 　山口青邨 　まず藤がのぞく隧道穴明り 　赤尾兜子 歳華集 　もてなしにトンネル内の氷柱見す 　右城暮石 上下 　暗きものトンネルの口芒原 　鷹羽狩行 　花蜜柑…