「長谷川卓」の日記一覧

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長谷川卓の「運を引き寄せた男 小説・徳川吉宗」

★3.3 初期初期(1994年)の作品の新装版。 10歳の新之助(後の吉宗)が根来の里で出会ったのが名草の多十とその配下の忍びの者。彼らが吉宗を将軍とすべくの謀略を勤めることになる。多十らとは別に、根来には涌井衆という幽斎を頭とする一派がおり、将来に渡って吉宗と敵対する。紀州藩には「薬込役」16人を藩の隠密調査を行う者がいたが、吉宗はそのまま公儀として「広敷伊賀者」として隠密業務として使う。 …

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長谷川卓 の 嶽神伝 風花 上下

★3.5 シリーズではエピソード6に相当するが本編で全エピソードが繋がることになる。同時に、後に《嶽神》と呼ばれることになる無坂の最後の編。 上巻は桶狭間から10年、元亀元年(1570)から三方ヶ原の戦い(1573年)まで。前半は無坂の孫・青地の動きに引きずられるように無坂も動く。青地は小暮衆の長・千次の使いで飛騨の地で軒山衆としてやり直している真木備や太郎、野髪らの女衆の様子を見にいった。そ…

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長谷川卓 の 嶽神伝 鬼哭 上下

無坂シリーズ3作目。 《上巻》★3.5 家臣の領地争いに倦んだ長尾景虎、高野山に向かったとする史実、実は月草を頼って越後の山にいた。それを察知した武田の「かまきり」はあぶれものを派遣する。四方津の使う「死人遣いの術」とは、薬物と催眠による不死身の術。 国境近くの龍穴に今回も影が現れた、無坂らは不思議な石の力で今回も窮地を脱するが・・。武田晴信は山の者たちの分断を狙う策に出た。扶持と里住まいを伴…

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長谷川卓の「逆渡り 嶽神列伝」。

★3.5 上・越国境の山の者・四三(しそう)衆では60歳を迎えると、捨て置かれるのが掟。 57歳の月草(つきくさ)はそれを待たず「逆(さか)渡り」に。死に向って一人で渡るのである。 前に暮らした越後の辰の里にあった山桜の根本、今は亡き妻の榧(かや)が骨を埋めてくれと願った所。月草はそこを己の終の棲家と定めたのだが・・。 途中で3人のひとり渡りと戦い、山犬の群れに襲われ、左膝の皿を割る大怪我…

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長谷川卓の「血路 南稜七ツ家秘録」。

★3.5  山の者シリーズの初作。 時代は武田晴信が信濃攻略に向け諏訪へ侵攻しようとしていた頃、途中にある龍神岳城主の芦田虎満は弟・満輝の裏切りに合い落城する。 城から落ちていく一子・喜久丸の窮地を救ったのは七ツ屋衆の市蔵という者。喜久丸は父母の仇を討つ決意を固め、七ツ屋の術を修練していく。 山中を誰よりも早く走り、長鉈を武器として自在にあやつる。 仇を討ち「二ツ」を名乗った喜久丸は、武…

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長谷川卓の「嶽神伝 孤猿 下」。

★3.5 「飛び加当」や「伊賀の鶴喰」との戦いは意外とあっけなくちょっと残念。 時代の推移を追うことに引きずられたか。この巻では今川の雪斎陣営、越後の長尾景虎陣営での働きが主となり、「外れ」の沙汰が解けたにもかかわらず、木暮衆としての活躍がなく寂しい気もする。 トヨスケが太郎を発見し、最後で雪斎が無坂こそ《嶽神》だと予言するのだが・・・。 そして4歳の多十を小夜姫と引き合わせた、27年後に…

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長谷川卓の「嶽神伝 孤猿 上」。

★3.5無坂シリーズの続編。 無坂は、4年間の「外れ」の沙汰を受け2年が経過、まだ木暮衆集落へは近寄れない。 今回は駿河の雪斎の仲介で武田信虎がこの地で儲けた一子・太郎の探索の物語。 太郎が山の者・鍬柄衆の者に攫われた、信虎に個人的な恨みを持つ者による復讐である。 信玄はこの機をとらえ「かまきり」に暗殺を指示した。 太郎は鍬柄衆の者から鳥谷衆の女衆に託され、再起を目論む鳥谷衆の棟梁に据え…

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NHKラジオドラマ「走れ源太」。

長谷川卓の「嶽神」上下が文庫本で5月に出版された。 久々の痛快な戦国忍者活劇を読んだ気がする。ちょっと比べるものを他に思いつかない。 主人公の多十は山の者という設定で31歳。武器は鉈と竹、槍、弓、矢、火薬も。武田家滅亡の現場に居合わせたことから、勝頼の遺児を守って落ち延びさせる。 物語は、多十と遺児の勝三一行に次々と襲い掛かる忍群との死闘。そして、そこに信玄の残したといわれる黄金伝説が・・…

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漂泊の民

長谷川卓の「逆渡り(さかわたり)」を読了した。本書は、一人の年老いた山の民月草が、妻の遺骨を持ち、逆渡りをする決意をしてから、それを達成するまでの旅の過程で出会った、様々な自然、人間との係わり合いを描いた物語である。「逆渡り」とは耳慣れない言葉だが、本書によると、「生きるために渡るのに対し、仲間との再会を期せず、死に向かって一人で渡ること」を意味している。著者の造語であると思う。  山の民を含め…